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zoom RSS 祝? 論文提出

<<   作成日時 : 2006/09/29 18:35   >>

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 論文を改訂の上、再提出した。うまくいけば私の3.5本目―査読なしの論文を0.5本として勘定すると、こういう半端な数字になる―の公刊論文となって、来年、印刷に付されるだろう。いつものことだが、嫌な気分である。

 ロンドンから帰国して10日間、論文校訂改訂(訂正10/1)にかかりきりでさぞ忙しかったかと思われるかもしれないが、外見的にはまったくそうではなかった。朝寝坊し、ぶらぶらと近所を徘徊し、料理に凝り、いつもと同じように酒を飲み、時には何時間もテレビの前から離れない、ご隠居か若旦那のような生活であった。しかし、変な話だが、私にとっては決して暇な時期であったわけではない。片時も私は論文のことを忘れなかった。甘ったるい、気障な言い方だが、懊悩していたとすら言いたくなる。
 論文に対して査読者からつけられた注文は、論そのものの根幹にかかわるもので、そこをいじれば私がもっとも重要と考えている主張、ひいては論文自体の存在意義が揺るがされているかもしれない、危ういものであった。私は綱渡りをしなければならなかった。何とか当初の目論見を保ったまま、最小限の改変ですまないものか、とも思ったが、査読者の指摘ももっともなところがあり、結局、結論部分の記述に大幅な修正を加えた。
 本論の記述、つまり事実関係のまとめについては注文は少なかった。それなりの水準に達していると認められたのだろうと思う。これはどういうことかというと、机の前に長々と座ってテキストに当たりなおす必要がほとんどない、という帰結に達したということである。改訂の多くは、ぼんやり考え事をしながら行われた。外見には反して、このような改訂作業はつらいものだ。アイデアを練っているときの小説家や漫画家に近いものがあったかもしれない。
 今朝、最終校訂の末、印刷したあとはろくに読み返さず、学校に行って提出してきた。結局、締切日での提出となった。あるいはさっさとまとめてしまって次の課題なり論文なりに向き直ったほうが健全だったかもしれないが、よくわからない。当初野心的な試みを目指していた、私の研究上の方針転換を高らかに宣言するはずの論文だったが、終わってみるとどちらかというと失敗作に終わってしまったような恨みがある。それでも公刊の意義はあると考えたので引っ込めることはしなかったが。

 それなりに労力と考察を経て作成した自作をむやみに卑下するのはかえって嫌味なことかもしれない。卑屈さと傲慢さは裏表の関係にある、と言ったのはアリストテレスだったか。今日の以上の記述から、「こんなに偉いはずの俺がこの程度のものしか生み出せないはずがない」という私の屈折した傲慢さを見抜いて不快になる人もいたかもしれない。しかし、こうした自慢は、自省心をどこかに置き忘れた人のあっけらかんとした傲慢さよりはまだしも人間味があるのではないか、と私は思っている。ともかく、今夜は論文のことは忘れたい。スペイン語の教材を聴き、酒を飲み、ゆで卵をつまみ、学校の図書館で借りてきた本にでも目を通すことにしよう。

 家に帰ってきたら最新号の『科学史研究』が届いていた。自分の署名が入った「論文」が載っていた。まったく、なんてことをするんだ俺は。こんな「研究」を1000人以上の見巧者の前に晒すとは。。
 封を切るなり、中身はあらためず、すぐさま本棚の雑誌整理コーナーに放り込んだ。

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コメント(5件)

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オラ・アミーゴ(最近、たまたまスペイン語講座を耳にしたので・・・)

おめでとうございます。

たとえ自分の本棚から消えようとも、この世のどこかに百年後も苦悩の証左が残ってるって素晴らしいことだよ。
hill
2006/09/30 01:23
おら!

いやあ激励(?)ありがとうございます

文章を世に向けて発表する、というのはそのときどきは嫌ですが、
生きた証になりそうなものはそれぐらいしかないですからね。。私にとって必要なことだと思います。
墓石と子孫だけしか残せない人生は、つまらんとは言わないまでも、あまり採りたくない…
金山浩司
2006/09/30 21:46
おつかれさま!
論文改訂作業の様子が生々しく書かれていて、興味深く読みました。のっけから「いつものことだが、嫌な気分である。」とくるとはちょっと意表をつかれたけれど。
bass
2006/10/01 01:31
えーっ! bassさんは嫌な気分じゃないですか?本当にこれでいいのかよ…と思いつつ、仕方ねえ、締め切りはやってくるもんだ、人間は所詮不完全な生き物だ、と、やけっぱちな調子で投稿する瞬間。
(こんな気になるのは俺だけか…)
金山浩司
2006/10/01 18:48
うーん、本当なら締め切りまでの全時間を全て改訂に費やしたいし、そうしても尚満足には届かない、そして原理的には自分の意思でそうすることはある意味可能である。にも関わらず、現実には、そこまで効率(?)悪いのはやはり問題だということで、他のことと並行して時間を割り振ってやらなければならない、というのは嫌です。
bass
2006/10/02 02:44

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