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zoom RSS 売り手が買い手に感謝するのは当然なのか?

<<   作成日時 : 2007/09/06 05:42   >>

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 ロシアに来た日本人が驚くことのひとつに、キオスク・商店での売り子の愛想の悪さに加えて、買い手の側が商品を受け取るさいに「ありがとう」という習慣のことがある(もっとも、それほど頻繁に見かけるわけでもなく、また、たまには「買ってくれてありがとう」という店員もいなくもないが)。実は私自身、いまだこの習慣にはなじめておらず、商品受け取りの際にどういう態度を取ればいいかわからず、ばつの悪さを感じてしまうのだが、まあそれはともかく、ここからいろいろと日本人の論評が始まるわけだ。
「あんなに態度悪い店員に対して『ありがとう』だなんて、ロシア人はひょっとしてマ●ではないか」
「完全に売り手市場だな。店員のほうが神様なんだよ、この国では」
「社会主義時代の負の遺産だな。当時は店員だってみんな公務員で、商品が売れても売れなくても自分の生活に関係なかったから、やる気もないし、『買わせてやっている』という態度だった。それがいまだに続いているんだよ」
「資本主義化したといっても、ロシアはまだまだだな。売り手側の競争という基本原理が全然わかってないんだ」
などなど。まあ、否定はしない、これらの論評そのものには、当たっている点も多いとは思う。
 しかし、とここでひねた私は思ってしまうのだ。果たして日本のように(日本とロシア以外の国のことは私はよく知らない)、売り手が買い手に対して「ありがとう」と言うのはそんなに当然のことなのだろうか、と。
 そもそも、誰かが誰かに金を払ってモノを買う、という、ほとんど世界中どこでも発達したシステムはどこから発生したのだろう。それはまずは、分業の必要性からだっただろう。人間の生活が野獣のレベルから脱すれば、生活に必要なすべてを家族だけでまかなうわけにはいかず、どうしても、私作る人、僕もらう人、という交換関係が発生してくる。この場合、おそらく感謝すべきは自分の作れないものを作ってくれる隣人に対して、であったはずで、買ってくれる隣人に対して、ではなかっただろう。
 そしてもっと生活が贅沢になると、その土地では作れないような物を売りにくる行商人の必要性が生じてくる。この場合、行商人に対しては人々は貴重な客として遇しただろう(むろん、差別意識などはあったかもしれないが)、と考えるのが自然ではあるまいか。売り手のほうだって商売なのはわかっていたにせよ、何せめったに手に入らないものをわざわざ持ってきてくれるのだから。
 都市化が進み(ということは分業化の度合いがさらに発達し)、商人同士の競争が激しくなり、買い手の側にも選択の余地が広がれば、もちろん、「買い手市場化」は進行する。そして、買い手はやがて、商品がそこにあることに慣れてしまい、「売り手の礼節」まで求めるほどに態度を増長させる。まあ売り手だって、確かに買ってもらえなければ自分の生活が成り立たないわけだから、買い手に対して低頭してしまう弱みはあるわけだ。こうして、お客様は神様の地位にまで上り詰める。
 しかし、例によって与太話的な結論を述べるなら、人間同士の売り買いということの原点を考えてみれば、本来は売り手のほうこそ感謝を要求してもいいはずだったのではないか。少なくとも、両者の立場は持ちつ持たれつであって、何も売り手が卑屈になることはなかったはずなのだ。
 断っておくが、私はロシアの商関係を擁護したいわけではない。21世紀にあって、そして曲がりなりにも近代化を遂げた国にしては、ロシアでの売り手−買い手の関係は確かに素朴であり、「資本主義における売り手の側の競争原理がわかっていない」のだろう。それは「社会主義時代の名残」だという意見にも反対はしない。しかし、日本における、ほとんど儀式化の域にまで達している売り子の卑屈さと買い手の王侯貴族化を、あまり当然視するのはどうなのだろう、そして、そうしたものがあるところでの尺度を外国に当てはめるのはどうなのだろう、と疑問に思うのだ。少なくとも、日本の商関係は買い手の快適さを生む一方で、売り手の側の過重労働、精神的ストレスを生んでいるのは間違いのないところなのだし、そんな関係性をはたして大威張りで他国に押しつけられるのだろうか、とも考えてしまう。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
中国もお上が「売ってやる」という態度で、何度も嫌な思いをしましたよ。
声をかけても店員同士私語を止めない、面倒くさそうに客に対応、おつりを投げ返す、決して「ありがとう」とは言わない・・・
こうして外国からのリポートを読む機会が増えると、どちらかというと日本が特殊なのか、と思いつつあります。
まるこ
2007/09/08 07:32
中国に長期留学した後でロシアにやってきた人もそのようなことを言っていました。「でも、ロシアは文明化されてる方だな。こちらの人の物腰はまだしも丁寧だ」とも。
ただ私の考えでは、両国ともその国なりの文明があるのではないかと思います。その現れ方が日本人から見れば「野蛮」にうつるのでしょうが。
ちなみに、上述の人いわく、「でも、中国では楽だった。買うほうだって同様にぶっきらぼうに接すればいいんだから」と。なるほど。確かに日本のほうが、ちょっとした人間関係を積み重ねる間にストレスがたまりそうです。
私も最近ややロシア人化していて、売り子など初対面の人間には、少々ぶっきらぼうに接しております。いや、もともと愛想のない人間ですが。
金山浩司
2007/09/08 15:52

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