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zoom RSS ロシア知識人たちの憂鬱

<<   作成日時 : 2008/12/25 23:49   >>

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 ロシアで「存在しないことにされているもの」:障害者、ごみリサイクルの必要性、著作権。はは、まだまだありそうだな。ロシアがいわゆる先進国の仲間入りをする日は来るのだろうか。(文化相対主義者たちから軽蔑されるのを承知で、こう言ってみたくなる)
 
 この国の知識人層は総じて、自分たちの現状・将来に関してひどく悲観的なように見える。我が国の人間にも同様の傾向があるが、その比ではないようだ。東京にいたころ我が家に居候していたJは、「シベリアは近い将来に[かつての中国のように]列強による分割を受けるんじゃないか。カムチャッカはアメリカに、樺太と千島は日本に、バイカル湖周辺は中国に、という感じで」と言っていた。「いやまさか、そんな」とは言ってみたものの、実際近年のシベリアの人口減が深刻であることを聞き及んでいる身としては、それ以上の反論をすることもできなかった。まあ、そうは言ってもシベリアにはすでに数百年にわたってロシア人が入植しているわけで、身を賭してでも守るべき父祖伝来の大地、として捉えられているのでは、と期待を抱いてみたりもするわけだが。ついでに与太話をすれば、ロシアがシベリアという開発途上のフロンティアをもっていることは、この若い民族の力を損なわせないための刺激要因になっているかもしれない。こんなことは下手をすると帝国主義的活動の正当化につながりかねないので、慎重に言わなければなるまいが。
 一昨日研究所(科学アカデミー自然科学史・技術史研究所)に行ったら、ちょうど研究員の一人が85歳の誕生日を迎えたということでミニ・パーティーが催されており、私も参加させてもらった(彼らは私が来たことから、この集まりを「国際シンポジウム」と称していた)。
 ロシアでは誰かと一緒に酒を飲む際、必ず何らかのため(健康のため、誰それのため、友情のため等々)に飲む、という習慣がある。私もそれに即して、頂いた素晴らしいスペイン・ワインで乾杯しようとする際、「あなた方の研究所の発展のために」と言ってみた。ところが親しくさせていただいている研究員の方が、「いやいや発展なんて。われわれは数年前まではモスクワの一等地にいたのに今や郊外に移転させられるし、研究員の多くはやめちまうか死んでしまうし、若い連中は入って来ないし」と自嘲気味に返してきた。これではなんだか私が皮肉を言ったみたいではないか^^ しかしまあ、実態はその通りなのではある。私がこれから二年間モスクワにいる予定と伝えた時の彼らの喜びようは大変なものだったが、これは私の能力に期待しているというより、とにかく若い人間が加わるのならだれでも大歓迎、という切迫した事情があるためではないだろうか。
 これは昨年のことだが、この研究所内で国際シンポジウム―こちらはアルコール抜きの正式なシンポジウム―が開かれ、ロシアからは原子力エネルギー関連のお偉いさんが誰かしら講演した。その中で、チェルノブイリ事故にも言及していたにもかかわらず、天真爛漫なほど原子力エネルギーの利点なるものを強調する態度に、正直私はあきれてしまった(研究所の名誉のために言っておくと、これは外部の人間である)。その後モスクワ市内某所で行われたレセプションに私も参加させてもらったのだが、このシンポジウムの座長を務めていたおじさん―後でわかったのだが、この人は研究所の副所長であった―に対して、はたしてあんな能天気な原子力礼賛の言説は一般に受け入れられているのか、と質問したところ、「わが国の市民社会はそれほどまで成熟していないのだ。安価なエネルギーが供給されるかどうかしか、一般住民は関心を持っていないのだよ」との答えであった。
 そう答えている時の彼の姿を今でもありありと思い出す。ウオッカのグラスをもつ手は幾分震え、その眼は憂愁に沈んでいた。200年たっても、この国の知識人はナロードニキがつき当ったのと同様の壁を感じている。あわれなるかな。

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