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zoom RSS ミサイル発射にみるロシア・ファクター

<<   作成日時 : 2006/07/06 03:35   >>

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 北朝鮮がミサイルを発射した。しかも7発もである。日本の首脳部、メディア、国民はてんてこ舞いのようである。私も数時間前までその一人であった。

 なぜ今、これだけ「嫌われる」「怖がられる」ことをあえてするのか、理解に苦しむ、と人は言う。しかし、これだけ大きな影響力を国際社会に及ぼす行為である以上、何の勝算もない見当違いの行動である可能性は少ない。ましてあの国はちょっとした外交政策の誤りが致命的な結果をもたらしかねない、弱い国である。私が今まで見聞した報道はその多くが北朝鮮内部の分裂(とは言わないまでも正常な判断力の喪失、焦りの上の迷走)に言及していたが、それは速断ではないか。

 北朝鮮にも何か、勝算とは言わないまでも、日本やアメリカの反発というリスクを補って余りある利益があったのではないか、というのが私の見たてである。それが何なのか、正確には私にもわからないが、日本人があまり着目しない「ロシア・ファクター」に目を凝らしてみると見えることがある。

 日本人はとかく、東アジア情勢に関して、自国とアメリカの影響力を虫眼鏡で見るごとく拡大させたうえで見たがる。しかし、北朝鮮を動かしている外圧的要素の多くを担うのは、日本の経済制裁やら拉致問題などではない。第一に問題なのは中国やロシアがどれだけ自分たちを見捨てないでいてくれるかどうかであり、韓国と敵対しないことであり、そしてアメリカの軍事的介入という最悪の事態を是が非でも避けるためにパワーゲームの中を慎重に泳ぐことである。日本は、、残念ながら、かの国の外交にとっては二次的なファクターでしかないだろう。拉致問題に関してもそうで、日本はこれを最重要の問題とみなしたがっているが、現在のように日本と北朝鮮との直接の交流が絶たれている情勢下にあっては、ほかの数カ国の同情と利害の一致が得られない限り、この問題も問題として浮上してこず、したがって北朝鮮からすれば痛くもかゆくもない。
 日本の経済制裁にしても、当然予測はできたことであろうが、それにもかかわらずミサイル発射によって北朝鮮には得られるものがある、と考えたほうが合理的であろう。

 北朝鮮を動かしているのは何か? ここで、私は北朝鮮の政治抗争だとか大して影響力がないと思われる「日本ファクター」から離れて、より実質的なファクターに注目したい。それは、ロシアである。
 今回のミサイルがすべてロシア近くの公海に着水したーそれはきわめて遠慮深くなされ、日本やアメリカの近辺は避けられているーことは非常に印象的だ。日本のテレヴィはウラジオストックの漁師を映し出し「まったく、怖いねえ」という彼のコメントを放映していたが、ウラジオストックの漁師はともかく、モスクワの高官がこのような大胆な行動に対して何の連絡も受けていなかったとは考えにくい。公海上とはいえ、通告も受けずに自国近くにミサイルを着弾させるのは(そのミサイルが「潜在的敵国」のものではない、としても)国の威信にかかわることだからだ。実際、これほどの大事件にもかかわらず、ロシアからの反応は静かなものだ。
 ここで気になるのは、韓国筋からもたらされた、先月下旬に金正日がロシアを訪問していたかもしれないとの報道(6月23日、産経新聞)である。ミサイルを発射台にすえつけている間に、もし金正日がロシアを訪問していたとすれば、ミサイル発射について何らかの取り決めーそしてもっと言うならば、取引ーがなされた可能性は高い。
 北朝鮮のミサイル発射がロシアにとって何の利益があるのか、と思われるかもしれない。しかしここでもうひとつ気になるのは、今月にペテルブルクにおいてサミットが行われるということだ。現時点ではこのことと北朝鮮のミサイル発射とを結びつけるものは少なかろうが、私はなんらかの関係があるのではないかと思っている。北朝鮮は、あえて、ますます「困ったちゃん」になろうとしている。サミットの席でアメリカと日本がいきり立つのを見越して、だ。このことは、実はロシアにとっては利益になる。日本とアメリカと北朝鮮との間の仲介役を買って出ることで、これまで蚊帳の外に置かれていた北東アジア外交の舞台において存在感をアピールできるチャンスが訪れるからだ。「G8」などという先進国の高級クラブのホスト役を、ロシアのような「後進国」が引き受けることには疑念を抱く人間が世界中にいるであろう。そうしたことを考えてみても、ロシアとしては、なんとしてもこのサミットで自らの存在の重要性を植えつけたいところであろう。北朝鮮も、それをわかってロシアとの間で「取引」を行ったかもしれない。つまり、われわれはアメリカと日本の神経を逆なですることで外交舞台(サミット)においてあなたがたに華を持たせてやる。そのために、ミサイル発射を黙認せよ、そしてわれわれを援助せよ、と。

 これを裏付ける、とはいわないまでも、気になる情報として、ロシアの情報筋が、北朝鮮の発射したミサイルの数は実は10発だ、と語っていることがある。日本の情報では7発ということだが、ロシア人がこの件で嘘をついたことでなんら自分の利益にならないであろうことを考えれば、少なくとも、これは「事前に通告を受けていた発射数」としては信頼できる数字ではないか。(実際には何らかの理由で差し引きの3発は発射されなかったか、日を置いて発射されるのかもしれない)

 別の要素として気になることもある。北朝鮮からしてみれば、中国にこれ以上頼れるのかを不安に感じているかもしれない。かの国の最大の関心ごとである「アメリカの脅威の除去」に対して、6カ国協議における中国は弱弱しい役割しか果たしていない、と見られたかもしれない。近年、すっかり北朝鮮は6カ国協議に対するやる気をなくしてしまった。中国に対して見切りをつけた、とまではいかずとも、別の「生き残る道」を確保しておきたい、というのは、孤立した小国にとっては自然の衝動であろう。そしてその生き延びる道を北朝鮮は北方に見出したのかもしれない。

 以上のことはまったくの推測である。私は北朝鮮の事情通でもない。私と同じようなことを述べる人間が今のところいないこともあって、正直、上の仮説には不安も抱いている。明日になれば変更されているかもしれない。
 ただそれにしても思うのだが、この国の報道、国際情勢の分析は、あまりにも日米の利害関心からのみ行われすぎていて、いったん近隣諸国の身になって考えてみる、という姿勢が不足しているのではないだろうか。北朝鮮が何に困窮し、何をもっとも恐れ、何を頼りにしているのか、ということに対する想像力がもう少しあれば、こうまで画一化された報道や言論の姿勢は形作られなかっただろうに、と思う。

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