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zoom RSS 文書館員ナターリヤ・ミハイロヴナ

<<   作成日時 : 2007/09/16 01:04   >>

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 モスクワの地を踏んでから3ヶ月が経過し、今回の滞在も折り返し点を過ぎた。ロシア語は相変わらず下手なのだが、それなりに生活を楽しむすべは覚えたとおもう。
 予想通りというか、ロシアでの生活は突っ込みどころ満載なのだが、われわれの業界では避けて通れない文書館・図書館にも、手ごわい敵が待ち構えている。文書館員(アーキヴィスト)だ。特殊なテーマで申し訳ないが、この件についてはかなり溜まっているものがあるので、今日このブログで吐き出してしまいたい。

 文書館での仕事の快適さは、まさにこの文書館員との相性、あるいは彼/彼女の有能さいかんにかかっているといってもよく、そういう意味では運にかなり左右される。多くの文書館において閲覧室の事務はさほどビジネスライクに組織化されておらず、入場から資料の申請、受け取り、閲覧、返却に至るまでのすべてのプロセスは、その場を取り仕切る館員の裁量にかなり任されている。したがって、有能な館員に当たれば、快適な研究環境が保証され、かつ融通が利くゆえさまざまな便宜を図ってもらえることが多いのだが、無能かつ官僚主義的な人物に当たれば、煩瑣なあるいは無用な労力を要求されるほか、下手すると仕事そのものの進行まで阻害されたりする。
 私がもっともよく利用する科学アカデミー文書館の閲覧室は、まさにこの「はずれ」の部類に属している。ここには何人か文書館員がいるようだが、下っ端の人とはほとんど話すことはなく、われわれ閲覧者が交渉するのは部屋のボスであるナターリヤ・ミハイロヴナ(以下、「NM殿」と略記)という初老(60歳ぐらいか)の女性である。外見は眼鏡をかけ、でっぷりと太った、漫画によく出てきそうな典型的な「おばあちゃん」なのだが、この人物がなかなか、何というか、手ごわい相手なのだ。
 NM殿は決して悪い人物ではない。仕事を終えて立ち去ろうとするときには「どれぐらいモスクワにいるの? 病気になったりしていない?」などと気も使ってくれる。一人の人間としては優しい人なのだろうと思う。しかし、仕事の場でまず要求されるのはビジネスライクな「能力」であって人間的優しさではない。その点が、なんともはや。
 すでにして、入館証の作成からしてそうであった。6月、初回に入館したときには科学アカデミーの研究所が発行してくれた紹介状をちゃんと持参したのだが、何度入館しても入館証を発行してもらえる気配がない。私はそのため、何度も入り口で警備員のおじさんに「閲覧室に用があるんです。入れてください」とわざわざ言わねばならなかった。おじさんも入館証が必要だと判断して、NM殿に言ってくれたのだが、まったく埒が明かない。次に訪ねたときも「あら、あなたまだ入館証持ってなかったっけ?」と言うばかりである。発行の労をとるのはあなたの仕事ではないか、と思うのだが。
 最近では警備員に顔を覚えられたので、何も言わなくても通してくれるようになった。そんなわけで、結果的にはOKなのだが、、、
 文書の申請に伴う手続きでもかなり頑固なことが要求される。ひとつの申請書には二つ以上のフォンド(文書整理のもっとも大きな単位)の文書を同時に記入してはいけないとか、一度に10以上の文書を申請してはいけないとか、個人ファイルは遺族の了承が必要だとか。まあ、この点が厳しいのは仕方がないとも言えようが、行く度に言われることがまったく違ったり、だめだと言われた文書が、書き方を変えて申請したらあっさり受理され閲覧できたりするので、こちらもかなり困惑する。あと、これは彼女の責任ではないのかもしれないが、文書がいつ受け取れるのかもまったくはっきりしない。「まあ、電話して」と言われるばかりだ。一度、それを信じて文書がすでに来ているかどうか電話で確かめようと思い、何度か試したのだがまったくつながらない(NM殿、何をしているのか知らないがしばしば持ち場を離れるのである)。仕方なく現地まで行ってみたら無駄足に終わった、ということもあった。まったく。
 申請した文書の受け取り時も、いちいちフォンドの番号(そう、これを覚えておくのも閲覧者の側の仕事なのだ!)をNM殿に伝えて、彼女が重い腰を上げながら文書の山をかき分けて探し出すのを待たねばならない。二つ以上のフォンドの文書を見たいときには大変である。昨日、NM殿が重役出勤してきたとき、別の若い文書館員の人が、あらかじめ閲覧者ごとに文書を整理分類し、机の上に「これはだれだれの見たいもの」ということがわかるように置いていた。そのおかげで、非常にスムーズに仕事に取り掛かることができたわけだが、このちょっとした事務処理上の工夫をNM殿も見習ってほしいものだ。
 私用電話、おしゃべりも激しい。彼女の仕事場とわれわれの読書室はさほど敷居がされておらず、おしゃべりが筒抜けである。まあ、文書館員との会話は職務上必要なのかもしれないし、閲覧者と会話を交わすのは構わないが、どう考えても私用電話だろうと思える電話を延々とかけていたりする。
 先ほども書いたように、重役出勤してくることもある。先日雨が降った日には、なかなか彼女が現れず、別の(てきぱき働く)若い人が事務をうけもっていた。おやNM殿はどうしたのか、風邪でもひいたのか、それとも辞めたのか、もし後者ならわれわれ閲覧者にとってさほど落胆する出来事ではないかもしれないが、などと思いつつ文書を読んでいたら、御大、1時ごろやってきました。そのあと、私用電話にて「仕事に来てるのよ。まったく、こんな雨の日に!」とおっしゃっておりました。おい。
 文書館は5時まで開いていることになっているが、これはあくまで建前であり、閉館時間はNM殿の気分により変動することがある。重役出勤の日、4時になるとNM殿、資料を読み終えようとしている私のもとにやってきて、「今日は金曜日ですので」と言ってきた。そう、金曜日は4時終了「のことがある」のです。同じようなことを以前は4時半に言われた。この文書館、金曜日の開館時間が徐々に短くなっていくのだろうか。
 まあ、この日は私も4時ごろ仕事を切り上げて図書館に移ろうか、と考えていた矢先だったので、結果的にはよかったのだが。それでも相手にしている資料を読み終えてはいなかったので、「ちょっと待って」と言いつつ、NM殿の視線に耐えつつ、5分ほどキリのいいところまで仕事いたしました。この日の彼女の勤務時間、3時間なり。もう、やりたい放題。
 
 まあ何と言いますか、日本の基準を外国でむやみに当てはめるのはよくないことだし、文句を言う前に最大限相手を理解しようと努めるべきだとは思うし、そもそもストレートに愚痴を言うのは好きではないのだが、ちょっとこれは、いくらなんでもひどい。
 ちなみに今日の記事は「ロシアに対する」苦情を言う目的で書いたのではない。この国の名誉のために言っておくと、ロシアにも人間的にも暖かでかつ有能な事務員は存在する(たとえば、私の受け入れ先である科学アカデミー科学史研究所の国際交流部を取りしきる事務の方など)し、無能な文書館員の話は、ロシアに限らずほかの欧州諸国に滞在している人からも時々耳にする。いずれにせよ、欧州やロシアの文書館で仕事をする人間には、かなり忍耐力やユーモア感覚が要求されるときがある、と言える。

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