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zoom RSS 最北の被災地を歩く

<<   作成日時 : 2011/07/13 19:19   >>

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 八戸に来ている。昨日午後、沿岸部を見てきた。鮫駅周辺―八戸市中心部から電車で十分ほど行ったところである。
 ここに来るまでは、未曾有の大災害の被害をこうむりがらも4ヶ月もたった今となっては、復興ぶりがこの地にも着実に見られることを、どこかで期待していた。復興ぶりを見て、震災の深刻さに関して高をくくることができれば、と勝手な願望を抱いていたのかもしれない。しかし、その期待は見事に裏切られた。漁港の修復は遅々として進んでおらず、被災ぶりの深刻さは到底高をくくれるようなものではない、これが私の結論である。
 駅から歩いて数分、漁港に入ってまず目がついたのが、崩れたまま野ざらしにされている食堂であった。木造の建物は傾いたまま、誰からも見捨てられているかのようだった。鉄筋コンクリート製の建物にもあちこちにひびが入ったままであり、表札は剥落したままである。
 漁船は何艘か岸につけてはある。しかしいかんせん素人の哀しみ、これらの船が震災以前と同様に働けているのかどうかは、見ただけではわからない。
 沿岸部から道路を一つ隔てたところに小さな食堂を見つけた。入って話を聞こうかと思ったが、営業はされていなかった。中をのぞいてみたところ、机やいすも撤去されているようである。この家のほかにも、修繕中と思しき家がそこここにみられる。木造の観光案内所などは、見るも無残に、骨組みと壁の一部だけしか残されていない。中にあったものはみな、流されてしまったのだろうか。
 海水浴場にも人影はさほど見られず、しんとしている。しかしそんな中、騒がしい場所がこの近辺にも残されていた。ウミネコの繁殖地、蕪島である。この日まで、私はこのカモメに似た海鳥の保護区がここにあることを知らなかった。蕪島は、島とはいっても今では陸地と地続きになっており、小高い山のようになっており、神社があり、頂上からの眺めはなかなかのものである(ただし次に述べる事情により、その景観を落ち着いて楽しむことは難しい)。このあたりに近づくほどに、ウミネコのけたたましい鳴き声が聞こえてき、あたりは鉄工所のごとき喧騒に包まれてくる。あとで近くの水族館に行って見てみた展示によると、夏は南方から帰ってきたウミネコがここに大集合している時期で、その数は何と三万匹にも及ぶそうだ。ヒッチコックの映画「鳥」に、鳥の大群の描写が出てきて我々の恐怖をあおってくれるが、それを地でいったものと思っていただければいい。鳥に対する恐怖感がさほどない私でも、神社の裾、階段、境内の至るところにウミネコがたむろし、騒ぎ立てているところを、かき分けしてのぼっていく中にあっては、若干の恐怖を覚えたほどである。いや、恐怖というより、もはやここは彼らの場所であって迂闊に人間が足を踏み入れてはいけない、という畏れとでも言おうか。
 今年は、この地域にとっては、言うまでもなくイレギュラーな年であり、そして、以前のような形にこの地域が戻ることはひょっとするともはやないのかもしれない。しかし、レギュラーなものを象徴する存在として、ウミネコたちがいた。無論、ウミネコとて純粋な自然ではありえず、人間による環境への工作の助けを借りてここに集い繁殖している以上、人間界を襲った災害から自由ではいられないだろう(人間界の被害のために彼らいつもよりも繁殖しているのか、それとも打撃をこうむっているのか、影響の方向性は私は知らないが)。しかしともかく、気の滅入るような人間界の状況に比べれば、ウミネコの社会(?)は元気であり、変わりがない。彼らを眺め、不易のものに思いをはせることが、元あったものの回復と我々の安心にプラスに働かないとどうして言えよう。津波という、その突発的力によりわれわれに激変をもたらした自然は、今度は、相変わらず集ってぎゃあぎゃあと騒ぎたてるウミネコを遣わすという、周期的な、安心できる力により、我々人間による安定の回復への手助けをしてくれるのかもしれない。

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内 容 ニックネーム/日時
何年も前のことだが、利尻島のサイクリングロードをママチャリで走破したときのこと、カーブを曲がったとたんにカモメの大群がど〜んと居座っていて(なかなかどいてくれない)、うっすら恐怖心を覚えた。カモメって、わりと目つきが怖いんだよな・・・
ひら(Cl)
2011/07/15 15:17

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